「衣乃ちゃん…」


「うん?」


「この休みを終えたら、最高学年だね。」


「そうだね。」


いつもより長かった

冬がもう終わろうとしている。


春の蕾が窓から見える。

雪解け水が屋根からポタポタとこぼれ落ち、

日が優しく照らしつける。


渚くんは私の手を引いて笑うんだ。


「俺、卒業してからの事、決めたんだ。」


私は屋敷のこの広い庭で

綺麗に泳ぐ鯉を静かに見ていた。


この心が囚われる日がくるなら…

この心が消えていくことが真実でも


私はまだ言葉を紡いでいくから。