「あのね…衣乃ちゃん。ここはね、髪の長い
お兄ちゃん…えっと…確か衣乃ちゃんが
ヨルくんって呼んでた男の人のお家なの。」


来夢ちゃんの言葉はあまりにも

衝撃的なものだった。


嵩広の口からも……

渚くんの口からも……

それに来夢ちゃんの口からも…


ヨルくんの名前が出てくるなんて………


「来夢ちゃん、ごめんね。お姉ちゃん、
ヨルくんのこと何も思い出せないの…。」


私はただ、ただ、うつ向いて来夢ちゃんに

本当の事を打ち明けた。


「衣乃ちゃん……」


「来夢ちゃん。思い出したら私と
一緒にありがとうって言ってくれるかな…」


私は来夢ちゃんに今できる笑顔を向けて

来夢ちゃんを優しく抱きしめた。


来夢ちゃんは『うんっ!』って笑って

私を抱きしめ返してくれた。