すると、衣乃は少し黙りきってしまった。
あれ…俺、気に触るようなこと言ったか?
「衣乃…?」
俺が小さな声で声をかけてみると
携帯越しで鼻をすするような声がした。
もしかして泣いてるのか………!!!
「衣乃…っ!?どうしたんだ…!
何があった?誰かに何かされたのか!」
俺は思わず電話ごしに大声をあげた。
でも衣乃は小さな声を絞り出しているような…
そんな風なかすれた声で言ったんだ。
『大丈夫…。なんでも…ない…から。』
あんまりにも弱々しいその声に、俺は
じっとしていられず今、衣乃が住んでいる
お屋敷に向かって走り出した。
『ちょっ…嵩広っ?』
俺は衣乃の驚いた声を最後に電話を切った。