「ヨル……それは無理よ。
渚はもう元には戻らないわ。」
ルル様は僕から離れて後ろを向いた。
あぁ…そうだった。
ルル様には教えていなかった。
「ルル様…僕の左手の能力を教えましょう。」
僕はそっとルル様に左手を差し出して、笑った。
ルル様は小さく頷いて僕の手をとった。
「僕の左手にはある人と過ごした記憶だけを
消すことができる能力があるんです。」
僕がそう言った時、ふわりと椿の花が揺らいだ。
「うそ……」
ルル様は僕の手を離して
フラッと倒れそうになった。
僕はそんなルル様をしっかり支えて、微笑んだ。


