「何よ…話って……」
ルル様は渚さんから離れて
僕の目の前に立ち、僕を見上げた。
僕はニッコリ笑ってルル様の手を引いた。
初めてルル様に見せた笑顔だった。
いつも無表情で命令されたことは
やりこなすただの執事だったから……。
だから今日だけはちゃんと知ってほしい。
「ちょっと……ヨルっ!いい加減
にしなさい。貴方らしくないわよ。」
ルル様は僕を叱って手を振り払った。
僕は後ろを振り返って回りを見渡した。
「これが本当の僕なんですよ…ルル様。」
少し冷えきった庭に出てきて、微笑んだ。
雪はべしゃべしゃになって、
足元は少し滑りやすい状態だった。
僕はそっとルル様の肩に僕の上着をかけた。
「衣乃さんはもう僕のことをすっかり忘れてしまいました。2度と僕のことを思い出しません。」
ルル様は驚いたように僕の方を向いた。


