「………嵩広…今なんて言ったの?」
衣乃は俺の腕を掴んで離さない。
俺は思わず、衣乃から受け取った
ミルクティーの缶を地面に落としてしまった。
カランッ…と静かに響く音。
濡れる髪…冷たい手…
それに慣れないヒールなんて履いてっから…
靴擦れして足が痛いって歩き方してる……
俺は何も言わずに衣乃をひょいっと
持ち上げて、背に乗せた。
「えっ?ちょっ…何?」
衣乃は驚いたように俺の肩を掴んだ。
本当にバカだよな…コイツ。
俺が衣乃の事、分かってねー訳がねぇだろ?
「歩けねーくらいに足痛めんなら、ヒール
なんか履いて大人ぶんなよ。バカ衣乃っ!」
俺には衣乃の顔が見えていない。
でも見えてなくてよかったって思った。
今の俺は誰よりも赤い顔して
隠しきれない顔してるから……