「俺……衣乃の事、好きなのかな……」
嵩広がふと吐き出した言葉に私は
ハッと反応した。
街頭にいる嵩広の方を向くと嵩広は
口元をバッと左腕で隠して自分でも
驚いたような顔をしていた。
「あっ……やっ……ちがっ……
なんでもないから。気にすんな。」
嵩広はそう言って私に背を向けて、
前を歩き出そうとした。
「待ってよ…」
私は思わずそんな嵩広の腕を捕まえた。
「今なんて…?」
私は嵩広の振り返った顔を見つめて
そこから動かなかった。
なんでか分かんない。
本当はダメなことだってわかってるんだ。
だけど………
その時、私は鳴っている携帯の着信音に
気づかないくらい、
嵩広の心に触れたくなったんだ。