私は思わず下を向いていた顔を上げた。
ヨルくんのこんな顔…見たことない。
ヨルくんの真剣な瞳が嵩広を見つめていた。
「………っ!!」
嵩広は少し顔を下げて、楓ちゃんの
腕を掴んで私の方を向いた。
そして、そのまま2人でタッタと私達の
前を通りすぎていってしまった。
私はポカンとして、嵩広の背中を見つめた。
何でそんなに悲しい顔してんのよ…。
楓ちゃん困ってんじゃないの……
ちゃんとしなさいよ……嵩広…。
「衣乃さん……」
心の声はどうやら私の顔に出ていたようで
ヨルくんは心配そうに私の方を向いていた。
私は思わずハッとしてヨルくんの方を向いて
「ごめんねっ、行こっか!」
と言って笑いかけた。


