「ねぇ…何がほしいって言うの?」


振り返り、尋ねたらそこにはもう何もない。

仏頂面な嵩広は私を見てクスリと笑った。


「何も欲しかねーよっ!」


嵩広はいつもみたいに

私のおでこにデコピンをした。


でも私にはそのデコピンがいつもみたいに

力強く感じられなくて…。


そのデコピンが悲しくすら思えた。


「そーだよねっ。へへっ。」


私は軽く嵩広に笑いかけて、

さっと前を歩いていく。


そうだ。嵩広には欲しいものなんてない。


私は1人で咲いたタンポポの花。

だから、綿毛になったら

嵩広の背中を押してやるんだ。