私は車に乗り込んで、病院へ向かって 車を走らせるように運転手に言った。 ヨルは小さく頷いて、寝かせた渚さんの頭の上 に右手をもっていって、そっと彼の頭を撫でた。 ヨルは人の記憶を書き換えるという不思議な 能力を持っており、ヨルの右手が頭に触れた時、 それは実行されているということになる。 「これで完了です。彼は彼女との思い出をすっかり忘れ、ルル様との思い出を思いだします。」 「えぇ…よくやったわ。ヨル。」 私はヨルに笑いかけた。 ヨルはそのままの表情で少しだけ頭を下げた。