「ルル様…しかしっ……」
私はヨルの言葉を無視して
フェンスから少しだけ離れた所で
ヨルに小さな声で教えた。
「あの人よ。私の王子さま。」
私はバスケットボールを持つ彼に指を指した。
無邪気に笑う王子さま。
『渚』と呼ばれるその人は綺麗な瞳をしてた。
「でもルル様っ…王子さまはあの方では……。」
ヨルは困ったように私の方を向いた。
「ヨル、私が王子さまって言ったら
彼が王子さまなのよ!分かるわよねっ?」
私はクスッと笑ってヨルの方を向いた。
ヨルは『はぁ…』とため息を1つ溢して、
自分のやるべき事が分かったかのように
頷いた。
彼に抱きつく女……。
どこかで見たことがある顔をしている。
一体どこで見た顔かしら……?