「報告なくなっちゃったんだ。へへっ…」
「っ……。」
衣乃ちゃんは俺の前を出て、
急に早足で俺の手を引いた。
何を考えてるの?
そんな悲しそうな顔で何を言いたいの?
俺だけ見つめて笑っててよ…
「ここだよ?報告しようと思ってたのは……」
衣乃ちゃんが足を止めて笑った。
嘘の笑顔で笑った……。
だってそこには………
「衣乃ちゃん……っ!!」
衣乃ちゃんの家が真っ黒になって
跡形も無くなっていた。
「渚くん、教えて…。見たことない世界を…。」
衣乃ちゃんは星空を見上げて手を伸ばした。
「私、時々ね、普通の家庭を持つ子供達に腹をたてちゃうんだ。お母さん、お父さんに手を引かれてさ…」
衣乃ちゃんは俺の方を向いて笑った。


