俺は階段をかけあがって、

真っ赤な鳥居をくぐり抜けた。


そこに1人空を見つめてボーッとしている

衣乃ちゃんが座り込んでいた。



「衣乃ちゃん……?」



俺は衣乃ちゃんの目の前でしゃがみ込んだ。



「嵩広……」


衣乃ちゃんは俺に顔を合わせず、

一言こぼした。


俺は思わず衣乃ちゃんを抱きしめた。


すると衣乃ちゃんはハッとしたように

俺の背中に手を回した。



「何があったの……?衣乃ちゃん…」


「何も無かったよ…」


「嘘つき…。俺が目の前にいるのに嵩広の名前呼んでボーッとして……それで何でも無いって?」