なぁ、衣乃…お前が望んだもの全て、

いつも目の前で消えていくんだ……。


「衣乃……」


衣乃は来夢ちゃんを

ぎゅっと抱き締めたまま動かない。


ただ、衣乃は俺に向かって小声でこう言った。


「嵩広…やっぱり私には出来なかった…。
幸せになるのはこんなにも難しいんだね…」


声が震えていた。


俺はそんな衣乃を見ていることしか

出来なかった。


警察官の人が俺達の方に近づいてくる…。