「な……渚く……。ごめんね……私行かなきゃ……。」
私は言葉にならない感情を押さえて、
必死に渚くんに声をかけた。
そんな私を見て渚くんは泣いていた。
「君の心はこうやっていつも誰かに
踏みにじられて、儚く消えていくのか…」
渚くんは悔しそうに声をあげて私を見つめた。
私も思わずその寂しい泣き顔に手を伸ばすけど
嵩広に腕を引かれて渚くんに届かなかった。
希望とか夢とか砂に書いてもすぐに消える。
確かにそうなんだ。
私が望んだもの全て、私から遠ざかった。
暖かい家族、暖かい家、暖かい料理、暖かい恋人。
嵩広だって私から遠ざかったその1人。
でもね、私の心はお金なんかじゃ買えないから。
大丈夫。渚くんの元に必ず帰るからね…
私は嵩広が呼んだタクシーに乗りこんだ。


