私がそんな風に思っていると
「衣乃ちゃん、風邪引くよ?」
と誰かの呼ぶ声が近づいてきた。
私が玄関の方を振り返ると……
「渚くん…」
私に傘をさして、コートを
そっと肩に掛けてくれた。
「中に入ろう?」
渚くんはいつだって優しい。
私は頷いて渚くんの手をぎゅっと握った。
………その時だった!
私と渚くんの足を誰かの声が止めた。
「待てっ……,」
そう言う声が私達の後ろから聞こえた。
私は思わず後ろを振り返った。
そこに立っていたのは…………
「はぁはぁっ…見つけたぞ?衣乃!」
息を切らしてニカッと笑う嵩広だった。