衣乃ちゃんが俺を抱き締め返す。
それと共に、か細い鳴き声が聞こえた。
「………っ…渚……く…っ」
衣乃ちゃん…君はどれだけ苦しんできたの?
大好きだった家を出て、嵩広に捨てられて……
居場所を失って1人でどれだけ苦しんだの?
少し下がった破り捨てたいテスト、
期待を超えられず傷が増えていくばかり。
俺がバスケに夢中になればなるほど
俺自身が何かに縛り付けられてた。
そんな俺のバスケを見て微笑んでくれたのは
衣乃ちゃんだけだったんだ。
「衣乃ちゃん…好きだよ…」
俺が初めて笑わせたいって……
助けたいって思った女の子なんだ。


