俺は振り向けなくて、背を向けたままその場に立ち止まった。 「莉子は好きでもねぇやつとつき合ったりしねぇぞ」 「……だよな」 分かってる。 分かってる………けど。 「“言葉”が聞きたいんだ」 その聞き取れないほど小さな声は和佐の耳に届くことなく、茜色の空へとはかなく溶けていった。