でも、今思えばあのときにはもう心をうばわれていたんだと思う。



その証拠に、莉子ちゃんの姿を見つけては話しかけに行ってたから。



でも、他の子にするみたいに触れられなかった。



いや、触れたらいけないと思ったんだ。



俺が触れると汚してしまいそうだったから。



……でも。



『莉子ちゃん、俺が数学教えてあげよっか』




どうしても近付くことを止められなかった。



数学が分からないと言って泣いている可愛い莉子ちゃんを放っておけなかったんだ。