だって、俺が兄貴でも思うから。
純粋な妹に悪い虫はついて欲しくないって。
それほど莉子ちゃんの瞳はまっすぐで澄んでいたんだ。
莉子ちゃんが入学してくる前、和佐に耳が痛くなるほど『莉子に近付くな』と言われた。
その時はハイハイと適当に返事しておいたけど、そんなに言われたら逆にどんな子か気になって、入学式当日、和佐の目を盗んで莉子ちゃんに会いに行った。
『ねぇねぇ、キミ、朝倉 莉子ちゃん?』
『は、はい。えっと……?』
目が合った瞬間、可愛いと思った。
でも、それだけ。
和佐にアレだけ念を押されていたせいか、そのときはそれ以上の感情はめばえなかった。