手のひらに乗せた貝に触れ、彼女は変わらない調子で言葉を紡ぎ続ける。




「貝の数を多く見せるだけでは、国は成り立ちませぬでしょう?」




貝の数は兵の数。

軍事で国を動かすのは晴信の仕事だ。


しかし、決してそれだけでは国は成り立たない。


民がいて土地と豊かな作物があって、この国は成り立つ。


そしてこの家が途絶えてしまえば、この甲斐を誰が守っていくのかと彼女は語る。


そのためには時に誰かと手を結び、時に誰かを迎え入れなければ、と。

軍を率いるだけが民のためではありません、と。


そう彼女は笑った。