「晴信様。私、決めているんです。嫁いだからには女の務めを必ず果たすと」




言葉を失った晴信に気付いているのかいないのか。

彼女はゆったりとした口調で更に言葉を続ける。




「それには貴方様の力が必要です」




そして柔らかな光を纏いながら、彼女の瞳が三日月を描いた。




「俺…?」




細められた瞳のなか、そこに映る晴信は戸惑いを隠せない困ったような顔をしていて。

情けないと思いながらも彼女の言葉の真意を掴むことが出来ずにいる。


それはただ子を産むというだけではないのだろうと晴信は思う。

彼女の瞳は何か、もっと遠くのものを見ている気がするのだ。


それが何なのか。晴信にはわからない。