しかし実際に輿入れしてきたのは公家の彼女。 こんな御時世だ。 公家であろうと武家であろうと慕うもの同士が結ばれることはないに等しい。 晴信や彼女にも決まった婚礼の拒否権などないも同然なのだ。 婚儀というのは当人たちよりも周りが盛り上がるものだと晴信は思っている。 彼女の放った言葉はまるで男女平等のように聞こえて。 晴信にとってそれは寝耳に水のようだった。 普段であれば何を言うかとその場に切り捨てていただろう。 そうしなかったのはきっと、彼女の瞳に自分と同じ光を見たから。