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それは今から六年程前。天文五(一五三六)年の初夏のこと。


二人の縁談は駿河国今川氏の仲介によって行われた。


婚姻を結ぶことはいずれ行われる当然の儀式。

拒む理由などなければ晴信もそれ自体に疑問を抱くことはない。


そもそもこの婚姻自体、晴信にとっては二度目の経験だった。

心の準備も慣れたものである。


しかし前回とは違うことが一つ。

それは相手が公家の女だということ。


お公家育ちの女とはどんなものかと。

それだけが晴信が首を傾げる理由だった。