「お前が…嫁いできたときの、こと…?」




その言葉に思い出すのは、かつて公家の家からこの地へ嫁いできた彼女の姿。


そういえば、彼女はあのとき何と言っていただろうか。

辿っていく記憶のなか、あの日の彼女が今と同じように唇を動かす。


晴信が当時のことを思い出しながら彼女を見つめれば、彼女は再びゆっくりとその顔に美しい笑みを浮かべた。




「私たちは運命共同体だと申し上げたではありませんか」




晴信を映す水晶のような聡明な輝き。


それはあの日と変わらない、未来を見据える瞳。