後の心配を顕する晴信に対してミツは小さく微笑む。そして言葉を続けた。




「この先、どんな未来が訪れるのかなんて誰にもわかりませぬ。だからこそ決して絶えることのないよう、この武田を継げるものを一人でも増やしておかなくてはならないでしょう?」




違いますか?

凛とした声色でそう言って微笑んだ彼女は、まるで春の陽射しのように柔らかく暖かい。


いつだったか家臣団の誰かが"奥方はここの太陽みたいですね"と言っていたのを思い出す。




「晴信様。晴信様は私が嫁いできたときのことを忘れてしまわれましたか?」