輝とはケー番とアドレスを交換しあって、一旦は着替えるために自分のクラスに戻ってきた。



教室では美結と陽がきゃあきゃあ騒ぎながら作倉センパイについて談笑中。



しばらく一人で呼吸を落ち着かせて今までの事を反芻してみる。



携帯を見ればちゃんと輝の名前がアドレスに入ってる。


「なーにニヤけてんのー?」


目ざとくそんなあたしの様子を窺ってきたのは、浴衣から制服に着替え終わった陽だった。


「……ニヤけてないもん。陽の方こそ作倉センパイはどうなったの?」


ああ、あれ?追い払われた、と、陽は苦笑いして紙パックのイチゴオレをごくりとストローで吸い込んだ。


それから、あたしがまだ手にしたままだった携帯を取り上げて、軽く睨んで「ちょっと!輝って誰よ!?」とか喚き出す。あーあ見つかっちゃった。


「輝は輝。七星輝。なんか流れで…付き合おっか…ってことになったっぽい」


なんでそういう流れになったかは省いて、結果だけを陽に説明した。


それを聞き咎めたのが、あたしの背後に立っていた美結。美結まで「はあ!? 輝!? あの七星輝!?」って大騒ぎし始めた。


なんだよ煩いなぁもう。


「あんたね、七星輝って言ったら2年の男子の中でも結構モテる系なんだよ!? しかも本人は無愛想だから誰が告っても絶対『うん』って言わないらしいし。なんでこっこと!?」


えー?知らないよ。なんか流れでそうなったし。何でって言われても困る。



ちょうどその時担任が教室に入ってきたから、陽や美結には勿体ぶって曖昧に笑顔を見せて席に追い返し、その実はこっそり机の中で携帯を操作していた。