用具倉庫で楽器をしまいながら、テンションを上げっぱなしで笑いあってるバンドのメンバーを。



「……あのっ……!」



どうしよ。


こんなに緊張するのは新人戦以来かもってぐらいに、心臓がバクバクしてる。


「あー!さっきたった一人だけアンコールしてくれた奴じゃん?」


ギターをケースにしまいこんでた男子があたしに気付いて、声をかけてくれた。



それに釣られて、他のメンバーもあたしを凝視している。


は……恥ずかしい。


けど、これだけは伝えたい……!


「あのっ、さっきの『night sky』、すごく良かったです。もう一回聴きたいぐらいでしたっ」


えへらっと笑ってバンドのメンバーをぐるりと見回した。



みんな口々に「良かったってマジで?」「そーゆー反応めっちゃ嬉しいわ」「また聴かせてやんよ」……そんな事を言ってくれている。


だけど。


ただ一人だけ、あたしには目もくれないで俯いてるのはボーカルの男子だった。