そんな感じのモヤモヤを抱えて、季節はいつしか期末テスト2週間前なんてビミョーな時期に差し掛かっていた。



あたしからの連絡も、輝からの連絡も全く途絶えた訳じゃない。必ず毎日、定時には電話をするのが習慣になってるし。


あたしの部活が終わるのが遅くなって、心細く一人で家に帰ってる途中に輝が電話をくれたりすると、すごくすごく嬉しいんだよね。


『……お前、まだ家に着いてねーの?』

「ん。部活が長引いた。けどもうすぐ着くよ」

『家に着くまで電話切んな。……心配だから』


電話の向こうから聞こえてくる騒がしい音楽。ゲームセンターかカラオケなのかな?


それにしても、輝が[心配だから電話切るな]って。


きっとみんなは知らない。


輝がこんなに優しいこと。


だけど、あたしも知らない。


輝が放課後、何をしているのかを。


聞いても多分「しつけぇ。黙れ」って言われそうだから黙ってる。でも輝の事だから、きっと何か考えて行動してるんだろな、って思う。



だからあたしは心配しない。



「輝。家に着いたよ。ありがと、電話切らないでくれて」


輝は電話口でくくっと笑い、『当たり前だろばーか』って悪態ついた。このやろーもう少し可愛い態度、とったらいいじゃんよね。


おやすみ、と言い合って電話を切る。




玄関先で家のドアノブを回しながら、ふと夜空を見上げた。


キリリと冷えた空気の、高く遠く空の向こう。


月の近くに綺麗な星が瞬いて光っている。




ああ、あの星、輝みたいだ。






白い息を一つ吐いて、暖房が効いた家の中に飛び込む。


……いつになったら、輝とラブラブーって時間を過ごせるようになるのかな……?