空も飛べるはず【短】



すごかったなあ。


あたしはぼんやりと空を見上げる。


もうすぐ日が暮れそうな、冬の灰色の空。


浮かぶのは、きみの笑顔。


すると、光の粉をまき散らすように、頭の中でくるくる回る幸せ。


きみのことを思うと心臓が踊って、指先の血管が、きゅってなる気がするの。


そんなふうに体が反応するなんて、すごい。


ああ。


あたしはやっぱり、すごく、きみが好きなんだ……。


空だって飛べちゃいそうなきみが、好き。


あたしはきみのまねをして、地面を蹴った。


でも宙に浮かべるのは一瞬で、すぐに靴の底は地面にぴったんこ。


がっかりする。


どうしてきみとあたしはこうも違うんだろう?


きみは空だって飛べそうなほど力強いのに、あたしはこんなに情けない。


重力に勝てなくて、なかなか前に進めなくて……。


空を見上げたら、涙がこぼれ落ちないって聞いたけど、嘘みたい。


どうしたって、液体は重力に逆らえないんだ。


足下に雫がひとつ落ちて、地面にシミを作った。