あたしはちょっとぼーっとしていたけど、質問の意味がわかると、勢いよく首を横にふる。


「……じゃ、俺とつきあって」


低い声が、ぽつりとあたしの胸に落ちた。


その瞬間、引っ込んでいた涙がまた顔を出す。


『じゃあ』の使い方がおかしい気がするけど、そんなことよりも。


つ、つ、つきあうって?あたしでいいの?


夢みたい。足が、地面から浮きそう。信じられない。


「う、嘘だあ……江藤くん、あたしをからかってる」

「はぁ?なんで?」

「だって、図書室で、あくびばっかりして、いつもつまらなそうなんだもん」


一気に言うと、きみは少し驚いたように目を見開いたあと、またため息をつく。


「お前だって、ずーっと本読んでたじゃん。

俺のこと嫌いなのかなーと思ってた。

ほんとはもっと話したかったんだけどさ。

あ、今日抜けたのは、もうすぐ大事な練習試合があるからだったんだ。

お前が嫌いとか、興味がないとか、そういうことじゃない。絶対。」

「えー!?」

「ほんとだって。ちっこいけど、ずっと可愛いと思ってた」


ちっこいけど、は余計だけど。


きみの言葉が、ぐるぐると全身を駆け巡る。


嬉しくて、涙がポロポロ落ちてきた。
ふいてもふいても溢れてくる。


「で、どうなんだよ。他に好きなやつとか、いるの?」

「い、いない!」


答えると、少し不安げだった瞳が笑った。


「じゃあ、お前は今から俺の彼女。決定な」

「は、はい!よろしくお願いします!」