「ッどうせあたしは綿飴先輩のように可愛くないです!ふわふわした女の子らしさなんて無いし、愛らしさの欠片も無い!あんなに可愛い女の子が傍に居れば、そりゃ先輩が揺らぐ筈ですよ!だって先輩の好みドンピシャだもん!」





まるで負け惜しみ。



いつだったか。綿飴のような先輩のことを先輩に聞いたことがある。そのとき先輩は“アイツは栞菜に似てる”と笑った。そのときは“あたしに似てるから可愛い先輩と仲良くしてる”と安心した。



でも今思えばそれは“今のあたし”ではなく“恋心を抱いてたあたし”なんだよね。



“今のあたし”は水荒れで手もガサガサだし寝不足で隈も出来ている。もはや女を捨ててるあたしは“恋心を抱いてた栞菜”の面影すらない。



もしも、あたしがずっと可愛いままで居続けていたなら、先輩はあたしだけを好きなままで居てくれましたか?



もし、綿飴先輩のことを“綿菓子のような女の子の可愛さ”に惹かれたんじゃなくて“栞菜に似てる”から惹かれたなら、最後の、最高の、プレゼントです。





「“ゴメン”は、要らないです。」




“ゴメン”は未練が残るあたしを惨めにさせる。



“ゴメン”はまるで、あたしとの時間を否定しているみたいでイヤだと思った。



寧ろひとときの夢を“ありがとう”


そう言えば先輩は困ったような顔をした。



相変わらず先輩は、酷く残酷で、酷く優しいひとです。





「どうぞ、御幸せに。」





相思相愛の“元”彼氏の先輩と同級生の綿菓子はこれで気兼ねなく御付き合いをして愛を育める。



そして邪魔者の初恋にはやっとピリオドが打たれた。