「上がって」 ふわっと。 そのまま背中を押されてパンプスを脱いで 廊下へと足を着ける。 カチャリと施錠した音を聞いても、危機感は感じなかった。 玄関から一歩だけ中に入った廊下で立ち尽くしていると、 靴を脱ぎ終わった男は 横をすり抜けて先を歩いていく。 それに黙ってついていくとワンルーム。 ベット、ローテーブル、そして本棚がいくつか。普通の家だ。 自分の家よりも、広い。と思った。 「適当に座ってて」 言われた通りに、ローテーブルの下にひかれたカーペットの上へと腰を下ろす。