「ハーイ、決まりっ!」

「ちょ、三木くん……!」


トーン……トントントン。

三木くんに頭を撫で回されたせいで抱えていたボールがするり、腕から落下する。

そのボールを慌てて目で追い掛けると。

「香坂、今日は残れ」

「……っ、相馬くん?」


ボールに手を伸ばしたのはバスケ部のエース、相馬くんだった。


「何だよ、相馬。またももちん苛めるのかよ?」

「ウルサイ。さっさと帰れ」

「ちょ、何だよ!相変わらず冷てぇ奴だな」

「………」

「分かったよ。帰るっつーの」


相馬くんの威圧に観念した三木くんは、相馬くんからボールを奪い取るとぶつくさと不満を洩らしながら体育館を出ていってしまった。

他のチームメイト達も相馬くんの機嫌が悪い事を察したのか、三木くんの後に続いてゾロゾロと出ていく。

体育館に残ったのは私と相馬くんの二人だけ。


「相馬く──」

「此方来て」