クリスタル

むあっと、酒のニオイが出迎える。
中は結構落ち着いてて、シックなのに、煌びやか。
なんでだろ。やっぱり、中に居るヒト達の服が凄いからかな。

全体に、薄く白い霧がかかったみたいな感じ。

スーツ姿の男共が色んな女性客と笑いあっている。
…皆同じ顔に見えるのは私だけか?
隣の燐を見ると、キラキラと顔を輝かせている。

「皆カッコイイね!!ほら、あの人とかあの人とか!!」

燐は数人の男を指差す。

「燐、人に指差しちゃ駄目だよ。」

「はぁい…」

うわ、落ち込んじゃったよ。
私は軽く燐の頭を撫でた。
燐は嬉しそうに私の顔を見上げた。
…機嫌直るの早いな、オイ。

「あれ?この前の燐ちゃん?」

優しい男の声がして私と燐は振り向く。
目の前には、長身の人懐っこい笑みを浮かべた男。
歳は大体25位か?

「レンさん!!あの時はありがとうございました。」

燐は可愛くペコリと頭を下げた。
くっそ、可愛い過ぎるから。

「いやいや、大丈夫だよ。お礼なんて。今日はお友達も一緒かな?」

「ウン!梓ちゃんって言って、あたしの親友なんだ!美人さんでしょー?」

美人?燐、今度一緒に眼科行こうか。
レンさんが私の方に目を向けてきて微笑んだから、一応軽く礼しといた。
あんま絡みたくない。

「ほんとだね。すっごいキレイ。今日は飲んでってくれるの?」

「うん!少しだけどね?」

燐は恋する乙女の顔で微笑んだ。
私は直感で分る。
燐は、このレンとかいう奴が好きなのか。
一人だと恥かしいから、私を誘ったのか。

私は一人で納得していた。