そう考えて、手を引いて走ったが大人の足には勝てなかった。
楓の手が引かれ、二人の手が離れた。
「うあああん!!」
驚いたのと恐怖とで楓が泣きだす。それに気を悪くした男は舌打ちをした。
「うるせぇ餓鬼だな。面倒だ」
いきなり手を離し、転ぶ妹。
背後で流れの速い川の音がする。川にかけられた橋を渡れば山道にに入り、山に入る手前に作業場があった。
逃げようとしても足が震えて動かない。刃にはまだ血がついていて、父と母を斬ったものだと考えると一層の恐怖を与えた。
雪を踏む音が近づいて、楓めがけて刀が降ろされた。
「楓……!!」
動けない妹の細腕を引いて、庇った。
「ぅぁっ…!」
今までに感じたことのないひどい痛みが全身を襲った。転んだり、喧嘩で叩かれたときとは比にならないくらい、痛く、熱い。
雪の上に倒れ込んで指1本として動かせなくなった。
「ねえね……!?」
空から雪が降ってくる。楓に向かって口をぱくぱくさせると、楓は一歩下がり、走り出した。
その後を普通の体格の男が追う。
首元の襟を掴むと、楓の体は地面から離れた。足をじたばたさせている様子がみてとれる。
男には屁でもないようで、ゆっくり刀を楓に向けた。
「やめ……っ………やめて……」
蚊の鳴くような声でも、体から何かが流れ出る感覚があった。
そして―――男が刀で楓を投げ飛ばした。
