…寝てるのか?

いや、まさか。

…まだ8時だぞ?

『…おかけになった電話は電波の届かない、』

<プチッ>

ケータイの向こうから聞き慣れた声が聞こえてきて、俺は電話を切った。

「…ダメか」

何となく呟いて、再びアドレス帳を開く。

…[梨奈]と書かれた項目をクリックしようとして、俺は手を止めた。

何故か、梨奈に電話をかける気にはなれなかった。