「放浪癖とは何だ。ちょっと遠出のお散歩が好きな素敵な伯父様と呼べ」

「「ご遠慮します」」

「何だお前ら、つれないな」

微笑ましい伯父甥の会話だ。

「あの…今更ですけど、此処は…?それに追手が来たら…」

「うん?此処は霊奈の邸の敷地内だぞ。無駄に広いからな、見覚えがなくても無理はないが」

悠梨の言葉に「まあ、確かに広いけどね…」と京が苦笑する。

言われてみれば、遠くに霊奈の邸らしき建物が辛うじて見えるような。

「それに今の春雷は前より警備が厳重になったんだ。そう何度も入り込ませやしないよ」

京は笑っていたが、言葉の節々に言い知れぬ苛立ちのようなものを感じた。

「あ…あの、兄さん。それに晴、風弓…」

ふと、陸が少し落ち込んだような面持ちで声を上げた。

「俺っ…何て言ったらいいか、その……ごめん」

「陸」

やはり風弓や葵と茜同様、洗脳を受けていたときの記憶ははっきり残っているらしい。

となると、あのときの言動に対する罪悪感は計り知れないだろう。

「えっと…京、さん。あんま陸を責めないでくれな?そもそも陸は俺なんかを助けるために、月虹に戻ってきてくれたんだ」

心配げに声を上げた風弓に、京は優しく微笑み掛けた。