――急いで転移魔法で春雷へ戻ると、邸の玄関に入ったところで京と夕夏、そして風弓の三人とに鉢合わせた。

「陸!」

「ただいま、みんな。三人揃ってこんなところで、どうしたの?」

「父さんからもうすぐ陸が帰ってくるって言われたからね。みんなで待ってたんだよ」

実を言うと、周は冬霞での陸の様子を“霊視”を使って見守っていた。

自身の意識を霊力に乗せて飛ばしその先の場所の様子を探る霊視は、魔力を通して任意の場所の様子を映し出す魔導士の“透視”とは似て非なる手段だ。

聴覚など他の五感まで研ぎ澄ますとその分気配も濃くなり勘付かれやすくなるため、視覚のみで状況を“視て”いたようだったが――幸い、誰にも気付かれなかったようだ。

「僕もね、ちょうどそんな気がしてたから…それを聞いて安心したよ」

「そっか。心配掛けて…ごめん」

…そして兄は、子供の頃から“何となく少し先のことがぼんやりと分かる”感覚の持ち主である。

これは霊媒師の技能ではなく生まれつきのもので、幼少の頃はもっと先の未来のことがはっきり分かったらしいが、年々その感覚は弱まっているという。

「おかえり、陸。冬霞で得られたものはあった?」

夕夏はいつもより幾分元気そうに笑顔を見せてくれた。

「うん…そうだな、色々聞けたよ」

「何だよ、思ったより随分早かったじゃねえか。まあ転移魔法が使えればこんなもんか」

「晴のこと、あんまり長く待たせたくなかったからさ」

確かに、午前中に春雷を出て陽が傾く前に帰って来たことを考えるとなかなか早く戻って来れたと言える。

転移魔法が使えない人間が春雷から冬霞へ向かう場合、距離がある上に直通の交通手段がないため、途中で黎明を経由しなければならず非常に時間が掛かるのだ。