「晴、兄さん。おかえり」

霊奈の邸に戻ると、陸が玄関で出迎えてくれた。

「陸」

「あれ、さっきのお客様はもう帰られたのかい?珍しいね」

「うん。この後も予定が入ってるんだって伝えたら、比較的早めに話を切り上げてくれたよ。だから俺、自分で晴を迎えに行けたのに」

弟から少々不満げに見つめられ、京は苦笑した。

「気持ちは解るけどね。晴海ちゃんは今日一日ずっとお前を待っててくれたんだ、これ以上待たせたら悪いだろ」

京に頭を軽く小突かれ、陸は口を尖らせながら分かってるよ、と相槌を打った。

そんな陸にくすりと笑うと、京は先に行ってしまった。

「――晴、今日はずっと放ったらかしにしててごめん」

「ううん、沢山の人たちと逢って大変だったんでしょ?大丈夫?」

少し疲れたような顔をしていて、何だか心配だ。

「平気だよ」

陸はそう言って笑うのだが。

「明日も忙しいの?」

「う…ん、今日程ではないと思うけど多分、忙しくなりそう」

不意に陸が屈んだかと思うと、肩にぽすんと額が乗せられた。

次いで、そのまま陸の両腕に抱き締められる。