つらつらと息つく間もなく発せられた声は、『彼女』の体温も上げよう熱情を含んでいた。
告白と片付けるには生ぬるい。生物最上の求愛ではないかとさえ錯覚する。
数多の男に求婚された『彼女』とて、“これ”が別格のものであるとは、上がる体温で分かる。
男に求婚された時は、必ず頭まで、その薄気味悪さに青ざめるというのに。
男の顔が美丈夫だからか。いや、顔で良し悪しを決めることなど、『彼女』の経験からして有り得ない。
顔だけで、その人の本質など、分からないのだから。
「あ……」
なのに、この男は、右でも左でもない、私自身の全てが『良い』と言う。一つの顔で、愛されも嫌われさえもしたのに。
「あなたは、何を考えているの……」
それはもう言葉にされた。しかして言葉は嘘をつく。男の感情が理解出来ないからこそ、疑心暗鬼に襲われる。
自身に求婚してきた男たちの頭の中など、酷くて目にも当てられず、逃げ出したかったのに、『彼女』は今、金髪の男の心を見たがった。
「先ほど述べた通りだよ、ご希望とあらば、他の言葉で我が気持ちを語ろう。言葉が飽きたのであれば、手紙で。手紙すらも飽きたのならば、我が身をもって、僕の気持ちを表そう。君が満足行くまで。君と出会えし僕の運命はもはや、君の中に在る」
尽きぬ求愛は、男の愛が無尽蔵である証だった。
疑心暗鬼すらも飴となる。男の熱情で溶けて行く。
しかしてーー
「でも、あなたは……」
化け物、と最後まで言えなかったのは、『彼女』自身がそう呼称され、傷付いたことがあったからだ。
本物の人外の方が、よほど人間らしく在る現実。この男と隣に並べば、確実に人々は『彼女』から逃げ、男に歩み寄る。
人間なのに化け物。だからこそ、人外にまで愛されてしまったのか。


