思わず、首筋に手を添えた『彼女』。次いで、自身がいる場所に目を向けた。
部屋の広さはそれほどでもないが、僅かに置かれたバロック様式の家具類が高級感を漂わせる。
欧米系統の部屋の作りはこの倫敦市だからこそ合うのだろうが、ここはさらに“由緒が残っている”ように感じられた。
悪く言えば古いであるが、誰もが憧れるーー強いて言えば、童話(フィクション)の中で用いれられるようなベージュとブラウンが占めるモダンな部屋であった。
「気に入ってくれたかい?僕の唯一のこだわりだが、君の瞳に映ることで、より完成されたものとなった」
「気に入ったって……あなたは、いったい」
何をしたいのか、問う前に、この男が言ったことを思い出す。
「君を、鳥かごの中に囲いたい」
思い出だけでなく、目の前でも。
怖気が立つほどの愛を聞いてしまった。


