血よりも愛すべき最愛



ーー

単なる気分転換が、思いも寄らぬ収穫を招く。

「血の匂いがしたので来てみれば、駆け足にはならない早足で来てみれば、何たることでしょうねぇ」

廃れた教会の来訪者。
無人となったその場に、痩躯者が立っていた。

「見つけてしまった。そうして思い出しました。湯水が溢れんばかりに思い出しましたよ」

マリア像の足元に積もる砂。一欠片の骨を痩躯者は手に取る。

「君、ボクの物でしたね。紛れもなく、ボクの物だった。こんなになっても分かるだなんて、君とボクの間には見えない繋がりがあったらしい。どうでもいい、そうして君もボクがどうでもよく、気づけば家出し、忘れかけていた物なのに……君はボクの物だと分かってしまう。確実にボクの物だと分かってしまうよ」

含み笑いをし、痩躯者は骨を捨てた。

「悪さして、誰かに狩られたのでしょう。可及的速やかに狩られてしまったのでしょうね。でも、確か、君は悪魔でした。ボクの悪魔なのだから、決して弱くなどない。人に負けるほど弱くなどない。ああ、ですからーー」

笑いを息と共に吹き出す。

「雄か雌か。出来るなら雌がいい。なるべくならば、雌がいい。そろそろ子宮が足りなくなってきましたから。悪魔を殺した“何かサン”はきっといい素材でしょうねぇ」

くつくつと、秒針のように小刻みに笑う。

「探しましょう、とかくも探しましょうかーー“草の根かき分けてでも探しましょうねぇ”」

神も悪魔もいない教会から去る。月光を浴び、深呼吸。

「いい日です。“右腕”に感謝しなければ、深々と感謝しなければ。でなければ、引きこもりのボクは外に出ません。進んで出ません。だから、ありがとう」

自身の右腕を左手で撫でる痩躯者。

「また、ボクは可能性を見る」