「いったい、どうしたと言うのだ」
自身の異常性を第三者の感覚で探る。
図らずも、紳士と言われ、殺人鬼と銘され、化け物と恐れられ、高貴なる吸血鬼たる者がーー何を取り乱すのだ。
「僕は……」
また問おう、“己に”。
“己はどこに行き、何をしたがっているのだ?”
「や……っ!」
その男の答えを待つつもりはない『彼女』は上がらない腰ながらも、逃げようと身を動かす。
この男もそうだ。
顔を愛してしまった男でーー
「待ってくれ!」
逃げる小鳥を捕まえる。壊れぬよう、手の力を加減して。
行かないでほしいとした気持ちの現れ、答えはこの行動から知った。
己がしたいこと。
初めてだからこそ分からぬ気持ちの名。
ただただ思ったのだーー


