膝を折った男。直視出来ない美貌が、うすら笑う。
「あなたは、何?」
「見目より『夜空』、正せば『殺人鬼』、統べれば『化物』。しかして、僕の“名詞”を語るならば、『吸血鬼』となろう。分かるかね?ここ数年で、僕(吸血鬼)をベースにした物語は数多あるはずだが」
吸血鬼。
人間よりも優れ、血を飲み、霞にも蝙蝠にもなれる化物。
狂言の是非は一連のことで、納得するしかない。無理にでも、コインの表にいるならば、裏は見られないんだ。つまりは、分からない物を知り得た未知の先では、何があっても不思議ではない。
「私、死ぬんですか……」


