血よりも愛すべき最愛



満月の夜よりも眩く、冷たく思える人であった。


唇は友好的な形をしているが、好意的ではないと言葉から伝わる。


「聖女の血は甘美。カルトの儀式でそういった物を使うようだが、あいにくと、僕は本物を口にしたことはない。

聖女と呼ばれる者の血ならば飲んだが、味は同じだ。また飲みたいとは思えない。血も飲めぬ人間が考えた寓話、けれども期待し、探求してしまう。途方もない時の中で、一つだけでもあるのではないかと。それこそが“至高”のあるべき定義なのだから」


座ったままの『彼女』に男の影が重なった。


「古く腐った血で舌が疼く。放牧されし家畜よ、食卓に並べて賞味しようか」