刃が納刀される。あんな長い鋭利がどこにあったかと思えば、何てことはない。侵入者は最初から、それを持っていた。
かつんと、刃(レイピア)が仕込まれた杖が鳴る後に訪れたのは沈黙。
分割された背骨は地に落ち、灰となった。
「……、ぁ」
ようやっと、息が出来た『彼女』。一連の流れは数分であるはずが、夢見から覚めた時らしく、振り返ればとてつもない時間が過ぎたように思えた。
「古来より悪魔は、美しいモノに惹かれるものだ。見目でも中身でも。神父の皮を被ったこれは、よほど美に恋い焦がれていたと見える。逆説、これの皮袋候補となった君は“聖女”と言えよう」
規則正しい歩調の侵入者――左目にモノクルをし、手首に銀の懐中時計を巻き、フロックコートに身を包む男(紳士)の容姿に、鳥肌を立たせてしまう。


