「生きて苦痛ならば死ねば良い。正論だが、その聖女が言う通り――誰もそんな救いは求めていないだろうな」
鳴り響くオルガンに緊張の糸が刺激された『彼女』は足から力が抜け、神父は激昂し、足を侵入者に向けた。
玄関から入ってこない招からざる客は、オルガンに杖を立て掛け、持っていたグラスを口へ運ぶ。
「死にたいと思う人間は星の数。しかして流星となりえず、居続けるのはその場でしか輝けぬから故に。命の輝きが失われし向こう側に、救いはあるのかね?」
「き、貴様……!」
笑顔のまま出された声は、憤りの表し。身の毛もよだつ音色だが、侵入者はどこ吹く風である。
「第一に、貴殿に救わ(殺さ)れたいと誰も思わんよ。手にかけられたら最後、生きたまま中身を掻き出されるのだから」


