血よりも愛すべき最愛



「『死にたい』と、思ったことはないかね?」


笑顔で言うにはおぞましい言葉を、“笑顔のままで発する”。


ずっと笑顔なんだ。
言葉を発する口は閉じたままの三日月で、声を出せる異常性。


腹話術の類いでないのは、神父の目が語る。


「神父、さま……?」


「ああ、“まあね”」


人ではないモノは嬉々し、人は恐々とする。


退路はない。あったとしても指先一つも動かせない。


死ぬことに恐れなす一方で――『彼女』はどこか、“納得”していた。


救われたいならば――、その問いに『彼女』も思ったのだ。


生きているだけで苦しい思いをするならば、いっそ。現実で一人っきりなら、夢の世界に行けば良い。きっとそこには、優しい母がいるはずだから。