「すみません、わ、私……、これでっ」
失礼しますと『彼女』が身を翻し、出ていこうとするも――扉が開かない。
「え、そんな」
神父が鍵を閉められるわけがない。自身は、“神父より後に入ってきた”のだから。
おかしいと力一杯扉を開けようとするが、壁のように佇むままであった。
「生者が救われるには、どうすれば良いと思うかね」
「ひっ」
近寄る神父に『彼女』の体は恐怖の雁字がらめとなる。
扉に背をつけ、動けずにいた。
「この現実において――万の人々が救われたいと神に祈り、叶わなかったと絶望する世界で、“それでも救われたい”と思うならば、道は一つしかない」


